情報科学屋さんを目指す人のメモ

方法・手順・解説を書き残すブログ。私と同じことを繰り返さずに済むように。

日本レコード協会&JASRACの「違法音楽利用を助長するスマートフォンアプリ」への対策動向調査メモ

著作権 (20)

日本レコード協会とJASRACが、「違法な音楽利用を助長するスマートフォン向けアプリ(※)」に対してどのような対策を講じているのかを、公式資料(機関誌や事業報告書など)を参考に調べてみたので、その調査メモを書き残しておきます(※日本レコード協会事業計画の言葉遣い)。

ちなみに、アプリの具体的な名前には、資料中で一切遭遇することがありませんでした。

調査内容

調査したかったのは、日本レコード協会(RIAJ)とJASRAC(日本音楽著作権協会)が、「違法な音楽配信を行うスマートフォンアプリ」や「違法な音楽配信を行うサイトへ誘導するスマートフォンアプリ」などの「違法な音楽コンテンツに関連するスマートフォンアプリ」に対して、どのような処置を講じているのか、ということです。

また、今回情報源に選んだのは両協会が両協会のホームページ上で公開している公式情報です。ホームページ上でどんな情報を提供しているのか、そのものも気になったので。

日本レコード協会とJASRACって、何が違うの?というところは自分もちょっと調べただけで細かいところは説明できないので、検索してみてください。というか、今回調べた結果からも、両協会の違うところが見えたかと思います。

調査結果まとめ

最初にまとめを書いておきます。

  • 日本レコード協会は、協会内に違法配信対策の専任組織「著作権保護・促進センター(CPPC)」を作り、スマートフォンアプリ対策も強化中
  • スマートフォンアプリ対策は2012年度に開始したばかり(日本レコード協会)
  • スマートフォンアプリは最新の問題として強く意識されており、今後強化される領域

日本レコード協会

日本レコード協会の公式ウェブサイト(http://www.riaj.or.jp/)は、一般の人向けの著作権関連の啓発コンテンツがかなり充実している印象です。

協会機関誌 THE RECORD が参考になる

最初、「調査・レポート」が参考になりそうだったのですが、どれもあまり新しいデータではありませんでした。

その代わりに参考になったのが「THE RECORD」という、日本レコード協会が毎月一回発行する機関誌です。

毎月フルカラー16ページ程度の機関誌が、公式ページにてPDF形式で公開されています

2014年5月号

その今月号(2014年5月号)の8ページにある「2013年度削除要請実績報告」が参考になりました。

スマホアプリの先にある「ストレージサイト」

削除要請件数の、年度単位での推移が紹介されており、昨年度実績は80万件以上にのぼります。その削除要請件数は「動画サイト(70%)」と「ストレージサイト(30%)」に分けられていました。

ここで言う「ストレージサイト」はアップローダーのようなファイルを保存できるサイトのことのようです。

今回知りたかった「スマートフォンアプリ」と関連していたのがこの「ストレージサイト」でした。

ストレージサイトへ誘導するページには「掲示板」や「ブログ」がある一方で、「スマートフォンアプリ」から違法コンテンツのある「ストレージサイト」への誘導が最近目立ったいたようで、これに対処するために、そのデータが公開されているストレージサイト側に「削除要請」を多数行ったようです。

その結果、次のような成果が上がったと紹介されています。

こうした取り組みの結果、スマートフォンアプリからのリンク保存先となっていた、一部のストレージサイトの違法音楽ファイルを徹底的に削除させたことにより、同アプリからの当該ストレージサイトの利用が激減するという効果が出てきている

このおかげで、音楽アプリの人気の入れ替わりが発生しているのだと思われます。現在はXiamiが新しい音楽データソース最有力となり、そこにイタチごっこの最前線があると。

また、国を問わず、海外のサーバーについても積極的に働きかける旨が書かれています。

2014年4月号

フルカラーで読みやすいのをいいことに、先月号(2014年4月号)も見てみました(綺麗なデザインだったので巻末をチェックしてみると、制作協力にFBI Communicationsという会社名がありました)

ここには、今年度(平成26年度)の事業計画が掲載されており、これが参考になりました。

[4]著作権および著作隣接権等の普及・啓発に関すること」の「(3)」に次のようなことが書かれていました。引用します。

違法な音楽利用を助長するスマートフォン向けアプリに関して、アプリ提供者等に対する注意喚起・警告活動や、アプリ削除要請、違法ファイルへのリンク切除要請、ファイル削除要請等を継続実施するほか、フィルタリング(起動阻止)対策を技術提供会社と協力して実施する。

ここでわかることは、先程は「削除依頼」という「コンテンツ提供サイト側」に対する働きかけの話でしたが、ここでは「アプリ提供側」に対する働きかけが述べられており、「注意喚起・警告活動・アプリ削除依頼・リンク切除要請」といった、コンテンツ提供サイトにたどり着かないようにするための具体的方策が挙げられていました

※「フィルタリング(起動阻止)対策」という部分が気になりますが、この文章だけからはよくわかりませんでした。『起動』阻止とあるので、ウイルス対策ソフトに機能を組み込んでもらうとかそんなことか、それともフィルタリングソフトに起動そのものを止める機能を入れるという話なのか、ぜんぜん違う話なのか。。。全くの誤解で通信を遮断する話かもしれないし。。。

また、この「[4]著作権および著作隣接権等の普及・啓発に関すること」でもうひとつ気になったのが「(2)」に書かれている次の文章です。

中国サイトについては、サイト運営事業者への直接訪問による協力関係の強化や「コンテンツ海外流通促進機構」(CODA)等関係団体との連携により対策の強化を図る。

「中国サイト」まで読んでそれこそ「違法なサイト」=「管理者が悪い」という話なのかと思ったのですが、「協力関係の強化」まで読むと、運営者ではなく、アップロード者が問題であって、運営者と協力して削除していく、とかそういう話なのかなと思いました。とにかくここでは、中国のサイト運営者を「直接訪問」という4文字が印象的です。

ちなみに、このような著作権関連の問題に対処する日本レコード協会内部の組織が「著作権保護・推進センター(CPPC)」であり、これについてこの事業計画書の冒頭で「特命組織」と書かれており、特に注力されている感じがします。

2014年3月号

もう少しさかのぼってみようと思って3月号もチェックしてみました。

ここで関連したのは、p.10にある「無料聴取層の非購入理由」というアンケート結果です。

アンケートの回答項目に「購入しなくても好きな時に聴取できた(YouTube 等を使った)ため購入しなかった」「パソコン・スマートフォン等で視聴・利用できる無料の動画配信サイト(YouTube 等)やアプリで満足している」「パソコン・スマートフォン等で視聴・利用できる無料の音楽配信サイトやアプリで満足している」などがあり、これらがばっちり上位にありました

このアンケート結果を見れば、スマートフォンアプリ対策に注力することが想像できます。

これらの内訳から簡単に考えれば、最も対策すべき対象は「動画サイト」で、その次が「音楽配信サイト・アプリ」という順のように見えます。

他にも似たようなアンケートが細かく取られており、びっくりしました。興味がある人は読んでみてください。

2013年4月号

目次がHTMLで一覧になっているので、一気に飛ばして「『違法配信』その実態と対策」という特集のある2013年4月号を見てみました。これはちょうど先ほど触れたCPPCが発足したころに発行された号です。

その特集には、過去10年の協会の取り組みが紹介されていたのですが、さすがに2009年までの話で「スマートフォンアプリ」の話は出てきません。スマホアプリに触れられているのは「CPPCに寄せる期待」という部分です。

「ファイル交換ソフト」「携帯電話向け掲示板サイト」「動画投稿サイト」「オンラインストレージサービス」などその対象は多種多様であり、また、リーチサイトや違法音楽配信の利用を助長するスマートフォン向け音楽アプリの急増など、違法音楽配信を取り巻く環境は日々巧妙化・悪質化しております

と書かれています。

この書き方から、この業界ではスマートフォン向け音楽アプリが最新の問題として強く意識されており、今後対策を強化していく領域であると予想できます。

また、同じ節で

違法探索や証拠収集などの実作業は膨大な手間と時間と、加えて熟練と根気を必要とし、会員社が個別に対応することは困難もしくは大きな負担となっています。この度、レコード協会が CPPC という専門組織を設立し作業を集約化することで、違法配信対策が飛躍的に効率化・強化され、会員社の負担も大幅に軽減されることとなります。

この文章からは、かなり専門的な、技術的背景もありそうな組織を構築しようとしているように読めます。

ここまでの感想

音楽配信関連アプリに対して、かなり積極的な対策が取られている印象でした。

とはいえ、まだ「スマートフォン向けアプリ」そのものに対する対応は始まったばかりで、実績というよりも今年度事業計画に存在感があり、今後実績が積み重ねられ次第、この機関誌で公開されるだろう、と思いました

ただ、対象となるウェブサイトやアプリの具体的な名前や細かい仕組みまでは出てこなかったので、実際どういうサイトのことを言っているのかがわからず、やや気になりました。

他の良い資料

日本レコード協会は年1回「日本のレコード産業」という冊子も作成していて、こちらは2014年版が出たばかりのようなので、こちらも覗いてみました。こちらもPDF提供のフルカラーでとても読みやすいです。一般の人にも読んでもらいやすくするような配慮を感じます。

こちらは今回の調査内容とはあわなかったのですが、かなり多岐にわたる数値がまとめてあり、年次変化がグラフ化されていて、数値データを引っ張ってくるのに役に立ちそうでした。表紙に「Statistics Trends」って書いてあったことに納得です。

JASRAC

JASRACのウェブサイト(http://www.jasrac.or.jp/)では、日本レコード協会のように読みやすい冊子は見当たりませんでした(今回の話とは全く関係ありませんが、音楽の使用料計算シミュレーションはなかなか面白かったです。コンサートについて計算してみたところ、自分が想像していたよりずっと安かったです)

そこでとりあえずプレスリリースを見てみたのですが、アプリに関連しそうな部分は見当たりませんでした。特に印象的なのは、「告訴」「逮捕」「装置」「取り締まり」のような警察関連な話題で完全に占められていたことです。啓発的な話題は見当たりません。これは、日本レコード協会のプレスリリースとはかなり違いました。

プレスリリースになかったので他を探してみました。

そこでなんとか公式サイトから掘り出したのが2012年度事業報告書です。資料として、日本レコード協会の時に比べてだいぶ堅苦しくなってしまいましたが、その分具体的な事例も書いてありました。

2012年度事業報告書

全20ページの事業報告書のうち、pp.10-12 の3ページが違法利用に関するページでした。

2012年度の報告書なので少し古めになってしまっているのですが、この中でスマートフォンアプリと関連しそうだったのが、次の部分です(p.12)。

アフィリエイト広告収入を目的とする違法音楽配信による著作権侵害の解消・発生防止及び健全なアフィリエイト広告事業の発展・促進を図るため、アフィリエイト広告サービス提供事業者と連携して著作権侵害対策を講じることについて、12月、日本アフィリ エイト協議会と合意した。

冒頭の「アフィリエイト広告収入を目的とする」の「アフィリエイト広告収入」が単に「広告収入」のほうが適切なんじゃないのかと思ったりするのですが、広告配信側と協力している、というのは全く知りませんでした。

注釈部分には、

(1)アフィリエイト広告を掲載している違法音楽配信サイトに関する情報共有、(2)サイト運営者への警告、(3)サイトへの広告の掲載中止、(4)サイト運営者に対する広告料の支払停止

という4つの具体的な著作権侵害対策が掲げられていました。

これらの対策は、音楽配信アプリに効果的な対策だと思われます。

ただ、これがどれくらいしっかり、そしてどうやって運用されているのかが気になりました。

広告を配信している側からしても、配信側の信用低下の可能性を別にすれば、広告を掲載したままでいたほうが儲けが出るわけで、権利団体とはモチベーションが大きく異なる気がしました。その辺りの数値情報が見たかったです。

アプリ開発者は「間接行為者」に相当?

また、「第9 著作権の保護及び制度の整備に関する取組」の「4 間接侵害の立法化に向けた動きへの対応」(p.18)に出てくる「間接侵害について検討」という言葉に対する注釈

著作物等を自ら直接に利用する者(直接行為者)以外の関与者(間接行為者)に対する差止請求の可否及びそれに関する立法措置の要否の検討

が気になりました。

これについてWeb検索してみると、次の説明が見つかりました。

近年、間接侵害が問題となっている背景には、インターネットが普及し、ネットサービス等を活用して著作権者の権利が間接的に侵害されるケースが続出していることが挙げられる。現行法では、直接的に権利を侵害する者に対しては、行為者に差し止め請求権を行使できることが著作権法第112条第1項に規定されているが間接的な行為者に関しては具体的な対象者やその範囲が明確にはされていない引用元

この「間接的な行為者」が「スマートフォンアプリの提供者」に相当するのかな、と思いました。

日本レコード協会の章で、アプリ運営者に対する働きかけは始まったばかりで、なおかつ「注意喚起・警告活動や、アプリ削除要請、違法ファイルへのリンク切除要請」という弱めな対応であり、違法な音楽コンテンツそのものが保存されているストレージサイトに対する措置がメインになっているのも、この現在の法律が関係していそうです。

再び日本レコード協会

ここで、日本レコード協会の事業報告書を探してみました。

平成24年度事業報告書

すると、情報公開ページにある平成24年度(先ほど紹介したJASRACと同じ年度)の事業報告書(現在の最新)に、次の重要な記述がありました(p.4)。

(5)スマートフォンを用いた違法音楽配信について、違法な音源や画源をリンクにより提供するアプリケーションの開発者・提供者等への対応を開始した

このことから、スマートフォンアプリに対する対応を開始してまだ長く見て2年程度であることが確認できました

ちなみに、先ほどまでアプリ提供者=開発者のように扱ってきましたが、ここでは両者が同時に現れているので、「提供者」は、iPhoneアプリならApple(AppStore)、AndroidアプリならGoogle(Google Play)のことかと思われます。

感想

全体的に、資料が充実している印象でした。特に日本レコード協会はだいぶ啓発活動に積極的で、読みやすい資料がたくさん用意されていることが分かりました。

それらの資料から、スマホアプリについては最近問題になり始めたばかりであるが、重要な問題として強く意識しており、対応は開始して間もないが、今後さらに対策が強化・重点化されていく様子が読み取れました。

コメント(0)

新しいコメントを投稿