情報科学屋さんを目指す人のメモ

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メルカリの「ゲームアカウント」売買解禁と利用規約・管理体制・ユーザーの声について

Fate/Grand Order (41) ポケモンGO (408) メルカリ (97) 利用規約 (15)

成長著しい人気のフリマアプリ「メルカリ」は、サービス開始より一貫して「実体のない物」の出品を禁止しており、その禁止物品の代表が「ゲームアカウント」でした。

しかし、ちょうど日本国内で「ポケモンGO」がリリースされ、ポケモンGOアカウントの取引が活発になった頃、気が付けばメルカリは、ゲームアカウントを含めた「電子データ類」の売買を認める利用規約の解釈変更を実施していました。

ポケモンGOの爆発的人気は、メルカリ運営にも大きな利益をもたらしたはずです。

このメルカリの電子データ類の出品解禁に関連する話題を書きます。

※文中に出てくる「RMT」は「リアルマネートレード」のことで、簡単に言うと、ゲームデータを現実世界の通貨で売買する行為全般のこと、です。

メルカリ、ひっそりと電子データの売買を容認

メルカリは少なくとも7月19日時点では、ゲームアカウントを禁止出品物としていました。

しかしメルカリは、8月3日以降、次の通り、「電子データ類」の出品を容認するツイートを繰り返し送信するようになりました。

多くのお客さまからご要望をいただき、現在「電子データ類」の出品は可能なっています

「ユーザーの要望にお応えして」的な部分が印象的です。ただ、この変更が実施された正確な日付ははっきりしません

利用規約の「解釈変更」

というのも、出品禁止物品などを定義している「利用規約」の更新履歴に変更の跡がないのです(最新の変更は、2015年3月16日、1年半近く前)

利用規約が変更されていないため、「出品禁止商品」の一覧には次の「物品でないもの」という記述が残っており、電子データ類は引き続き取引できないように読めるままです。

2.出品禁止商品
出品者は次の各号に関係する商品の出品ができないことについて予め了承します。以下に該当する商品を出品した場合は、出品者の故意又は過失に関わらず、本規約違反行為とみなします。

・・・
(15) 物品ではないもの(情報、サービスの提供、会員権などの権利を含むがこれに限られないものとします)
・・・
引用元

つまり、メルカリ運営の「解釈変更」によって電子データ類が許容されるようになったようです。

先ほどのツイート類から推定するに、ちょうどこの変更が行われたのは、日本国内での「ポケモンGO」提供開始の10日後くらいと予想されます。

実際、ポケモンGOのゲームデータ(ゲームアカウント)は、メルカリ上でより頻繁に売買されるようになりました。

pokemon-go-cheat-tool-market-mercari

「運営が規約で禁止しているのにどうして売買を容認するのか」の声

さて、メルカリの公式Twitterアカウントは、先ほどのツイートの通り、「売買できない」と思っている人に、「売買できるようになりました」という返信を送信しています

しかしその一方で、「ゲーム側の利用規約では、アカウントの売買が禁止されている」という指摘に対しては、なかなか返信をしていません。

「運営がアカウントの売買を禁止していたら出品禁止物」ルール

さかのぼってみると、電子データ類の取引を容認してまだ間もない頃に、

というツイートに対して、次の返信をしていました。

その返信の中で、「権利者(つまりここでは規制を設定できるゲーム運営)」が禁じているのであれば出品禁止、としています。

有名ソーシャルゲームの利用規約とメルカリでの出品状況

そこで今回は実際に、有名ソーシャルゲームの利用規約でアカウントの売買が禁止されているかどうかおよび、禁止されていた場合、メルカリでの出品状況はどうなのかを確認してみることにしました。

ポケモンGO

まずはやはり「ポケモンGO」ですが、「アカウントの販売や交換」を不正行為・ガイドライン違反として禁止しています。

変更を加えた、また非公式のソフトウェアを使用すること。複数アカウントでプレイすること。(1プレイヤー 1アカウントでお願いします。)アカウントの複数人での共有。位置情報を変更したり操作したりするツールや技術の使用。アカウントの販売や交換引用元

しかし、メルカリを「ポケモンGO アカウント」と素直に検索してみると、次々ポケモンGOアカウントの出品が見つかります。

mercari-game-data-pokemon-go

Fate/Grand Order (FGO)

続いて、現在熱狂的な人気を誇るスマホゲーム「Fate/Grand Order」ですが、こちらの利用規約でも以下の通り、アカウント等ゲームデータの販売は禁止事項とされています。

第14条(禁止事項)

お客様は、本アプリの利用にあたり、以下の各号の行為を行ってはならないものとします。
・・・
(7) 本アプリの内外を問わず、アカウント並びにアイテム、仮想通貨及びゲームデータ等(ただし、これらに限られないものとします。)を現金若しくはこれに類似するものにより売買し、又は交換取引をする行為
引用元

これについても、メルカリで検索すると、多数出てきます。

mercari-game-data-fate-grand-order

白猫プロジェクト

コロプラ製作の有名ゲーム「白猫プロジェクト」も、利用規約内で、リアルマネートレードを禁止しています。

(5) サービスの内外を問わず、ゲーム内通貨・アイテム等を、現実社会の金銭・財物・その他の財産上の利益で、取引する行為(いわゆるリアルマネートレード)またはその申込みの誘因・申込・承諾を含む一切の準備行為 引用元

こちらも、メルカリでアカウントが多数出品されています。

mercari-game-data-shironeko-project

モンスターストライク

mixiの大ヒットゲーム「モンスターストライク」でもリアルマネートレードは禁止されています。

※1 RMT(リアルマネートレード)を行う行為とは
RMTとは、モンスターストライクのコンテンツ(アイテム、モンスター、報酬など)を現実のお金で取引することです。取引をした際に、トラブルや詐欺被害のご報告をいただくことがありますが、RMTは不正行為として利用規約で禁止しており、このようなトラブルが起こった場合でも、弊社では責任を負いかねますので、ご注意下さい。

◎ご報告をいただいたトラブル(一例)
・他人にアカウントを渡した後、返してくれない
・他人からアカウントを購入後、勝手にデータが引き継がれた 引用元

しかしこちらも、メルカリで検索すれば多数の出品を確認できます。

mercari-game-data-monster-strike

パズドラ

根強い人気のあるパズドラも、当然のように利用規約でアカウントの売買を禁止しています。

4. お客様は、お客様のユーザIDを貸与、交換、譲渡、売買もしくは質入してはならず、また、方法を問わず第三者に利用させてはならないものとします。 引用元

こちらもメルカリでは多数出品されており、購入可能の状態です。

mercari-game-data-puzzle-and-dragons

結果:確認したすべてのゲームでアカウントの売買は禁止

この通り、どのゲームも、当然のようにアカウントの売買は禁止されていました。

ちなみにメジャーなソーシャルゲームで、アカウント売買が禁止されていないものって、どんなのがあるのでしょう。。。

削除が追いついていないだけ・通報したらすぐ削除してくれる、なら良いが・・・

このようにメルカリ内を検索して出品が見つかるだけであれば、削除が追いついていなかったり、この後すぐ運営に削除される、一瞬だけ出品状態として見えていただけかもしれません。

しかし、そのような管理が行き届いていれば、以下のような「削除してくれない」を始めとするさまざまな指摘は発生しないはず、というわけです。

削除してくれない・対応してくれない

電子データ類を解禁して以来、たとえゲームの利用規約で売買が禁止されているとしても削除してくれない・対処してくれない系の声が目立ちます。これが問題となっています。

有名ゲームについて売買禁止を把握していない

「モンスト」「白ネコ」「パズドラ」を名指ししていても、「権利者が禁止しているものは~」と返すのみです。

ちゃんと返信するのであれば、「また、それらのゲームは利用規約にてアカウントの売買が禁止されており、メルカリにおける出品禁止物に該当します」くらい答えて欲しいものです。

権利者からの報告じゃないと削除しない?

↑このツイート、「権利者よりご連絡をいただいた際には」となっています。

また、他の「白猫プロジェクトでは規約違反なんだから対処して」とのツイートに対しても、わざわざ「権利者よりご連絡いただいた際は内容を確認した上で然るべき対応」と返答するにとどまっており、普通に読んでしまえば、「ユーザーからの連絡では対応しません」と読めます。

さっきからどうして「ゲーム運営」などの表現ではなく「権利者」とわざわざ言っているのも気になったのですが、これ、「著作権侵害は親告罪だから本人か代理人からの通報じゃないと消さないよ」的な話と同じスタンスに読めます(もしくは、アカウントを利用する権利は貸し出しているだけで、権利そのものの所有権はゲーム運営になる的な話でわざわざ権利者って言っているとか。どちらにしても権利者=運営と読むのが自然であることに変わりはない)

「RMTは著作権侵害だ」的立場に立った記述なのかもしれませんが(考えすぎのような気もする)、「権利者」と書かれているのは、初見で「ん?」と思ってしやすい表現です。

RMTが違法とする側の主張
信用毀損罪・業務妨害罪に抵触する。RMT業者からゲーム内通貨等を購入することで、ゲーム運営企業の課金アイテム購入が不要となり、ゲーム運営企業のビジネスモデルを破壊する。[要出典]
著作権侵害に抵触する。ゲームデータはゲーム運営企業の著作物であり、RMTは他者の著作物を利用して利益をかすめ取りゲーム運営企業に損害を与える行為に該当するため。 引用元

「利用規約違反者から手数料を取って利益を上げようとしている」の声

このような状況から、利用規約違反を見過ごすことで、メルカリが手数料を得ようとしている、との厳しい指摘も上がっています。

返信はありません。

他のフリマアプリ・オークションアプリとの比較

こんな状況のメルカリですが、例えば楽天のフリマアプリ「ラクマ」は、以前からゲームアカウントの取引が消されにくいと多くのユーザーから認識されており、「ポケモンGO アカウント」の検索結果はこんな様子です:

mercari-game-data-rakuma

つまり、フリマアプリの中でもメルカリだけで特別売買されている、というわけではない点には注意してください

老舗の「ヤフオク!」でも取引されています。:

mercari-game-data-yafuoku

mercari-game-data-yafuoku-search-result

失望するユーザーの声

この通り、がゲームアカウントの売買に寛容な他サービスがある一方で、今までゲームアカウント売買をそれなりに厳しく禁止していたメルカリ(メルカリでRMTが無かったわけではないが問い合わせれば違反判定された)。そのメルカリだからこそ、突然の「解禁」には、それなりのインパクトがありました。

「通報すれば10分もしないうちに出品消されるのが好き」とまで言われていたのですが、そんな状態から、前述した通りの「消して貰えない」の評価へ変わってしまいました。

ひとこと

今回の「電子データ類」の解禁によって、メルカリの売り上げはまた一段と伸びたのではないかと思います。

ポケモンGOの影響もあったわけですし、ぐーんと。

ただ、「実体のない商品の出品禁止」という「メルカリらしさ」が失われてしまった感も大きいです。

そして先ほど紹介したように、ゲームアカウントの売買に対して厳しく取り締まってくれる、という評価も消えつつあります。

しかしそれでも、電子データ類の取引解禁を求める「多くのユーザーの声」のほうが優先すべきだったということなのでしょう。売り上げも上がりますし。

もちろん、両者を兼ねる、「ゲームデータを除く電子データ類を解禁する」という手段もあったはずです(もし、多くのユーザーが求めた取引解禁の対象が、まさにゲームデータそのものだとしたら、そうは行きませんが)

どちらにしても、早く利用規約に明記して、分かりやすい状態にして欲しいものです。

参考

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