情報科学屋さんを目指す人のメモ

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「11月14日のスーパームーン前後に大地震が発生する」の噂と調べたことメモ

地震 (50)

現在、「68年ぶりのスーパームーンがある11月14日の前後に大地震が発生する」という噂が広まっています。そして地震関連の噂には珍しく、具体的な研究成果に触れられている場合もあります。これはどうやら、もともとNewsweek日本版の記事の文章が発端となっているようでした。

そこでNewsweekの文章を読んでみると、元となった論文がどういう表現をしているのかが気になりました。

そんな流れでちょっと調べたことをメモしておきます。

広まる「11月14日に大地震が発生する」の噂

「11月14日に68年ぶりのスーパームーンが来る」という話とセットで「大地震に注意しないと」という噂が広まっています。

Newsweek日本版の記事に「巨大地震」と「月の引力」の関連を示す研究が紹介されている

この元をたどると、「スーパームーン」と「大地震」を関連づけているNewsweek日本版の記事「68年ぶりの超特大スーパームーン、11月14日に:気になる大地震との関連性」がありました。

そこには、以下の文章があります。

ところが今年9月、東京大学地震科学研究グループの井出哲教授らが、「巨大地震は、潮の満ち引きの原因となる月の引力が強くはたらく時に発生しやすくなる」という研究結果を英科学誌『ネイチャー』のオンライン版に発表した。同チームは、マグニチュード5.5前後の地震1万件以上と、潮の満ち引きを起こす力のデータを分析。すると、高潮の力がはたらいているときにM5.5クラスの地震が始まると、M8かそれ以上の巨大地震に発展するケースが多いことがわかったという。 引用元

これが、「科学的な裏付けがある・研究がある」という話の元となっているようです。

前後との関係が気になる

先ほどの文章は「ところが」で始まっているのですが、その前には次の文章があります。

スーパームーンと大地震を関連づける科学的な証拠は存在しないというのが、従来の科学者らの共通認識だった。 引用元

この文章を受ける形での「ところが」ですが、続く文章で紹介されている研究成果は「スーパームーンと大地震を関連づける科学的な証拠」を直接言っているわけではありません。

そしてそこから、さらにその後の段落で、68年前のスーパームーンのときも、前日に大地震があった、という話をしています。

 調べてみると、68年前に地球と月が最接近した1948年1月26日の近くでも、わずか1日違いの1月25日に、フィリピン・パナイ島近くを震源とするM8.2の地震が発生している。 引用元

ちょうど、「スーパームーンと大地震の関連(科学的な証拠なし)」「68年前の地球と月との最接近前日にM8.2の大地震発生」という2つの話の間に、関連する研究成果が差し込まれた形です。

どうもこの3つの段落の関連性、つまり、結びつきの強さ・弱さの程度が気になりました。

またこの記事は最終的に、

もちろん、11月14日前後にこうした大地震のリスクが高まるかどうかはわからないが引用元

と言っていて、やはり参考にされている論文が気になりました。

元となっている論文が気になった

このとき、この記事をYahoo!ニュースで読んでいたのですが、そこを見る限り論文タイトルはなく、大学名と著者名が書かれていたので、それで探してみることにしました(実はNewsweek日本版のページからは、この後登場するnatureのページへのリンクがあった)。

その結果、まず業績ページ「研究業績|井出研究室」を見ても、2016年3月が最新のようで、それより新しいものは見当たりませんでした(約半年更新されていない状態?)。

そこで、それっぽい単語と「Ide, S.」という名前で探してみると、次のnatureの記事が見つかりました。

そして、そこから、「英科学誌『ネイチャー』のオンライン版に発表した」が最終的に指し示している論文が「Earthquake potential revealed by tidal influence on earthquake size–frequency statistics」であると分かりました(nature geoscienceのletter)。

Abstractを読んでみると

リンク先でabstractは読めるのですが、本文はGoogle検索しても見つけられず(著者が公開している系があればよかったのだけれど)。

ただ、abstractだけでもいろいろ分かることがありました(※tidal stress: 潮汐応力, amplitude: 振幅, fault plane: 断層面)

Here we calculate the tidal stress history, and specifically the amplitude of tidal stress, on a fault plane in the two weeks before large earthquakes globally, based on data from the global, Japanese, and Californian earthquake catalogues. 引用元

We find that very large earthquakes, including the 2004 Sumatran, 2010 Maule earthquake in Chile and the 2011 Tohoku-Oki earthquake in Japan, tend to occur near the time of maximum tidal stress amplitude. This tendency is not obvious for small earthquakes. 引用元

この通り、潮汐応力の振幅が最大となるタイミング付近で発生する傾向が大地震にみられたこと、そして、小さい地震についてはその傾向がはっきりしないということが書かれています。また、後半では、潮汐応力の振幅が大きくなるにつれて、大きな地震の割合が増加する傾向にあるとしています(※Gutenberg-Richer relation: wikipedia

ニュース記事の「巨大地震は、潮の満ち引きの原因となる月の引力が強くはたらく時に発生しやすくなる」という文章を読んだ時点では「(巨大地震が月の引力が強くはたらくときに発生しやすくなるのは、)これこれこういう理由があるからだ」というメカニズム方面まで含んだ論文の可能性があり得たのですが、やはり今回の論文は「(巨大地震が月の引力が強くはたらくときに発生しやすくなるのは、)本当だよ」という、傾向があることをしっかり計算してちゃんと明らかにしたよ、的な話のようです。

既存研究はどんな感じだったのかが気になる

ただそれを読むと、「どうしていままで、その傾向の有無の計算をしていなかったの?出来ていなかったの?」とも思ってしまったのですが、関連文献を読むのはちょっと大変すぎ・・・。

そんなときに見つけたのが、ネイチャー・ジャパンによる次の文章で、既存研究に対する表現として飲み込みやすかったです。

既に破壊に近い状態にある地球上の断層が太陽や月の重力によってすべりへと押しやられるということは直感的に考えられるが、潮汐が地震の引き金になることについては確実な証拠は得られていなかった引用元

今までの関連に対する理解はこんな感じだったと(本当か?)。

それでも「なんで今まではこんな具合だったんだろう」が気になり続けますが、最近になって潮汐応力に関するデータが正確に計算しやすくなっただとか、今まで熱心にこの部分を計算する人がいなかっただとか、なんかいろいろあったんでしょう、うん。

追記

改めて確認してみると、「Moon’s pull can trigger big earthquakes : Nature News & Comment」を読み直すのが良さそう。ちょうど良い具合に書かれている。

ひとこと

ちょっと調べてみて、だいぶニュアンスが分かりました。一応言っておくと、Newsweek日本版の内容について、追加で調べた範囲で特別変なことはなかったと思います。一応リンクもあったし(Yahoo!ニュース、ハイパーリンクまでばっちり転載して欲しい・・・)。

参考

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