情報科学屋さんを目指す人のメモ

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「無線LANただ乗り無罪」ニュース読者への誤解を指摘する声も誤解している?について

ニュース (6) 無線LAN (1)

「無線LANただ乗りは無罪」というニュースが話題となっています。これに対して、「タイトルだけで判断して無線LAN無罪と言っていて、ニュース本文をちゃんと読んでいない人が多い、電波法違反では無罪だったけど、結局、無線LANのただ乗りは不正アクセス禁止法違反の罪で有罪になっている」という、誤解を指摘する声が増えています。

しかし、話題となっているNHKのニュース記事を見ると、話はもう少し複雑で、その誤解の指摘も誤解なのではないかと思えてきたので共有しておきます。

話題の「無線LANただ乗り」ニュース記事

話題となっている「無線LANただ乗り」の記事はこちらです:

指摘されている読者の誤解

このニュース読者の「無線LANただ乗り無罪だったんだ」などの反応に対して、誤解を指摘する声が増えています。

具体的な指摘としては、「電波法では無罪だけれど、ニュース記事の一番最後の部分で、結局無線LANのただ乗りは不正アクセス禁止法違反では有罪になっている」などがあります。

そのニュース記事最後の部分には、以下の文章があります。

一方で、不正アクセス禁止法違反の罪などについては有罪とし 引用元

この誤解の指摘では、これを読んで、「無線LANただ乗りは電波法では無罪」だけど、「無線LANただ乗りは不正アクセス禁止法で有罪」という、2つのことを言っています。

電波法と不正アクセス禁止法、対象が別

しかし、NHKのニュースの「中盤」をよく読むと、次の通り書かれています。

他人の家に設置された無線LANの通信を傍受して、暗号化する「鍵」を解読し、無断でインターネットを使う「ただ乗り」をしたとして電波法違反の罪に問われたほか、銀行のサーバーに不正に取得した企業の情報を使って侵入した不正アクセス禁止法違反の罪などに問われました 引用元

つまり、罪に問われた行為にはもう一つ、「銀行のサーバーに不正に侵入した」という行為があるのです(ちなみに、「銀行の無線LANにただ乗り」とは書いてありません。実際、近所の男性宅の無線LANにただ乗りし、そこから銀行に不正アクセスした、という流れのようです)

そして、「無線LANただ乗り」は「電波法違反」のみが問われ、「不正アクセス禁止法違反」は、無線LANただ乗りではなく、「銀行のサーバーへの侵入」が対象となっています

無線LANただ乗りに対しては有罪が出ていない

つまり、「無線LANただノリは電波法では無罪」は正しそうなのですが、どうやら「【無線LANただ乗り】は不正アクセス禁止法で有罪」という解釈は、それこそ最後の文章だけを見ると正しいのですが、よく読めばこの点は本文では言及されておらず、「【銀行のサーバーへの侵入】は不正アクセス禁止法で有罪」が、不正アクセス禁止法で有罪となった対象であるようです。

つまり、今回の裁判では「無線LANただ乗り」に対しては「電波法違反」しか問われておらず、それについて無罪となったので、「無線LANただ乗りについては無罪」の判決、という解釈で合っていそうなのです。「不正アクセス禁止法」は、対象が「無線LANただ乗り」ではありません。

もちろん、「無線LANただ乗り」に対して別の罪で問われることがあったときどうなるかは分かりませんが、今回のニュースを読む限りは、有罪になったものはなさそうです。

他のニュースの場合

一方、読売新聞を見てみたところ、

「ただ乗りは電波法違反にあたらない」と述べ、無罪とする一方、電子計算機使用詐欺罪などは有罪と認定し 引用元

と「電子計算機使用詐欺罪など」では有罪と書いてあるものの、それが前の段落に書いてある「ただ乗り」と「不正送金」のどちらの行為に対応付けられているかを明示していないため、より誤解しやすくなってしまっています。しかしこちらも、少なくとも「無線LANのただ乗り」と「電子計算機使用詐欺罪など」とを結びつけているわけでもないので、「無線LANのただ乗りは電波法では無罪だったけど、やっぱり電子計算機使用詐欺罪などでは有罪になるから、結局無線LANのただ乗りは有罪になる」とは解釈できないように読めます。

【追記】NHKの別のニュース記事に専門家からのコメント

NHKの19時台に掲載された別のニュース記事ページでは、専門家の意見として、次の通り掲載しています。

インターネットのセキュリティーに詳しい、慶応大学の武田圭史教授は「世の中には制限なくアクセスできる公衆無線LANなどがあり、自分のものではない無線LANを使うことを、すべて法律で取り締まるのは難しい」と指摘しています。 引用元

用途によっては「無線LANただ乗り」の行為は有罪

ただし、NHKのニュース記事にも「『無線通信の秘密』を盗んで使用した者は罰せられる」という裁判長の指摘があるとおり、今回の行為が「無線通信の秘密を盗む行為」に該当しなかったかため電波法では無罪だったものの、もしこれが無線LANの他人の通信を傍受する目的だったのであれば、有罪だった、ということになります(もはやただ乗りとは別物だが)。

このあたり、誤解の指摘にも別のパターンがあるので注意してください。

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