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マイナンバーの取り扱いについて、とにかく「他人にむやみに目的外で教えてはいけない」と言われています。しかし、実際のところ、それを知られることによる具体的なリスクが何であるかが不明確で、前からもやもやしていました。そこで今回は、マイナンバーを他人に知られる危険性について、調べたり、実際にマイナンバーの問い合わせ電話番号に電話をかけて聞いたことを、ここにまとめておきます。
「マイナンバーを知られてはいけない・知られるべきではない」が「マイナンバーは絶対に知られてはいけない番号」や、さらには「マイナンバーを見られたら死ぬ」くらいの受け取られ方をしているのが謎で、具体的に何のリスク・どういう悪用のケースを意識して言ってるんだ?、と思ったので。
目次
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「マイナンバーを他人に知られる『リスク』って何?」「どうしてマイナンバーを知られちゃいけないの?」
さっそく、実際にマイナンバーのコールセンターにそのまま「マイナンバーを他人に知られるリスクを教えてください」という質問をぶつけたときの回答を紹介します。
これが、やはり基本的な考え方です。
マイナンバーだけでは、悪用できない。
マイナンバーを利用する際には、顔写真付きの身分証明書(運転免許証)等の確認が義務づけられている。
マイナンバーの利用に必要な「マイナンバー」と「身分証明書」のうちの、「片方を知られた」、というリスクにすぎない。
以上が、「マイナンバーを他人に知られる危険性」です。
つまり、「マイナンバー」というもの【だけ】を知られることによるリスクは、この程度のものに過ぎず、よく言われるような「なりすまし」は、成立しません。
とりあえず、「マイナンバーを見せたら証明書が取得できる」のような、マイナンバーをパスワードか何かと勘違いしている人がいるとしたら、一度政府広報オンラインなどに目を通すことをオススメします。
また、この「マイナンバーを他人に知られる」ことによるなりすましリスクは、「個人番号カードを盗まれた」ことによるなりすましリスクと、「それだけでは利用できない(身分証が別途必要)」という点において同等です。
公式情報
公式情報で、関連する内容は、例えば以下の物があります。
Q5-5 もしマイナンバーが漏えいしたら、なりすましされて悪用されるのではないですか?
A5-5 マイナンバーを使って社会保障や税などの手続きを行う際には、個人番号カードや運転免許証などの顔写真付きの身分証明書等により本人確認を厳格に行うことが法律でそれぞれの関係機関に義務付けられています。言い換えれば、万が一マイナンバーが漏えいした場合であっても、マイナンバーだけで手続きを行うことはできませんので、それだけでは悪用されません。 (引用元)
ここの強調表示した部分は、もっと大きい文字で書いてあれば良いのに、と思います。
じゃぁどうして教えちゃいけないの?
「じゃぁどうして教えてはいけないのか」と思う人もいるかもしれませんが、これは当然、「知られる前よりリスクが上昇している」から、ということでひとまず説明できます。
もちろん、知られていないに越したことはありません。
問い合わせ窓口に「どうしてマイナンバーをやたらめったら他人に教えてはいけないのか」と聞いたときも、やはり「マイナンバーを利用するための条件の一つである『マイナンバーを知っている』が破られるだけで、結局本人確認ができなければ問題にならない」とのことでした。
公式情報にも、次のように書かれています。
法律や条例で決められている社会保障、税、災害対策の手続きで行政機関や勤務先などに提示する以外は、むやみにマイナンバーを他人に教えないようにしてください (引用元)
マイナンバーを使った本人確認に必要な「マイナンバー」と「顔写真付き身分証」のうちの片方が知られる、というそれだけでは致命的ではないものの、リスクが上がる、という行為を、わざわざする必要はありません。
ひとつが突破された状態
「マイナンバーを知られた」というのは、家のドアにかけたいくつもの鍵、すなわち「マイナンバー知っていますか?」「身分証持ってますか?」「どんな顔ですか?」などの鍵のうちの1つが盗まれた、という状態です。
それひとつだけではドアは開きません。なので、実際のなりすましは成立しません。
さらに、もしこのことに気が付いたのであれば、鍵の交換、すなわち、マイナンバーの変更も可能です。
マイナンバーが漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められる場合に限り、本人の申請又は市町村長の職権により変更することができます (引用元)
何も起こらなければ変更できないマイナンバーも、漏洩したことに対する対策であれば、変更可能である、という例外を覚えておいてください。
世の中の誤解や誤解しやすい文章
とりあえず、「マイナンバーを他人に知られる危険性」が、世の中でどう説明されているかを調べてみると、以下のような誤解しやすいものが出てきます。
名寄せについて
もし自分のマイナンバーがネットなどで漏れてしまった場合、どんな危険が想定されるのでしょうか?
悪徳名簿屋に漏れたときは怖いですね。マイナンバーをキーにすることで、同姓同名の人がいたり結婚して名字が変わったりした場合でも、個人を特定できることになります。訳あって名前を変えて引越しもして、「これから新しい生活を始めるぞ!」という人がいたとしても、マイナンバーで追うことができるんです。
マイナンバーは一生変わりません。悪徳名簿屋が持っている情報の一つひとつは大したことのない内容でも、マイナンバーを元に複数の情報を「名寄せ」することで、その人の経歴や家庭・職場についてなど、重要な情報が見えてくる可能性があります。 (引用元)
例えばこの「名寄せされる」「名簿屋が悪用する」というケースです。
この文章だと、冒頭に飛ばしすぎていて、具体的な悪用方法を想定できないまま、リスクを妄想してしまう人が多くなりそうに思えます。
確かに、名寄せのリスクそのものは、マイナンバーの制度設計で、特に意識されている部分です。
ただ、これは結局のところ、マイナンバーとセットで何が知られたか、によります。
たとえば、国税庁から、マイナンバーとセットで氏名と納税情報が漏れればそれは一大事です。
純粋に「自分のマイナンバーがネットなどで漏れてしまった」というのであれば、「マイナンバー」と「フルネーム」のペア程度でしょう。
これによる悪用可能性は、同姓同名の多い名前であっても、マイナンバーで区別できるようになる、くらいの問題です。
他のデータと一緒に漏れたとしても、ありふれた名前が、珍しい名前に変わったようなもので、今までの名簿屋の名寄せの成功率が上がる(100%になる)、というだけの話です。
「他のデータ」が大切なものであれば、それがマイナンバーとセットで漏れて名寄せ効率が上がってどんなものか、という話です。
例えば、国税庁から、氏名と納税情報が漏れたらそれは一大事、というのは、マイナンバーが無くてもそりゃそうです。名寄せのしやすさがそこに上乗せされるかどうかの違いです。
もちろんこれも「悪用」ですから、極力避けようと、特定個人情報保護に対する厳しいルールが作られているわけですが、実際に「どのように悪用されるのか」を「具体的に考えてみる」ということはとても大切で、むやみやたら危険危険と言っているのはよくありません。
ちなみに、結婚しても変わらないから追跡される、的なものも、一応制度上、マイナンバーの漏洩に時には、マイナンバーの変更申請ができるという話を、ここでも振れておきたいところです。
レンタルビデオ店
次のは、いまいちどういう悪用が想定されているのかわかりません。
マイナンバーが記載された個人番号カードは身分証明書にもなるらしいけどこの記事読んでトラブルの予感しかしない pic.twitter.com/BhT6MhFBme
— Bibi(ビビ) (@bibi_zombie) 2015, 9月 1
「見せるべきではない」が「絶対に見せちゃダメ」と言い換えられた結果、そのニュアンスが読み手に伝わらず(書き手がどう思っているのかも知らないけれど)、どんどん解釈が拡大されているような気がします。
源泉徴収票をコピーするときに?
次のも、いろいろなところで見かける話です。
先日職場でマイナンバー制度に関するレクチャーがあったんだが、源泉徴収票にマイナンバーが印字されると聞いてビビッた。「絶対に知られてはいけない番号なので、源泉徴収票のコピーを提出するときはマイナンバーを隠してコピーしてください」と言われたが、この時点でもうトラブルの予感しかしない。
— モア船長 (@captain_more) 2015, 8月 31
それも知られてどういうリスクを想定しているんだろう?と思ってしまいます。「絶対に知られてはいけない」という言葉が一人歩きしている間があります。
ちなみに、そんな中、源泉徴収票にはマイナンバーが記載されないことに決まっています(「本人へ交付する源泉徴収票や支払通知書等への個人番号の記載不要について(国税庁)」より)。
個人番号の記載が不要となる税務関係書類
(給与などの支払を受ける方に交付するものに限ります。)・給与所得の源泉徴収票
・退職所得の源泉徴収票
・公的年金等の源泉徴収票
・配当等とみなす金額に関する支払通知書
・オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書
・上場株式配当等の支払に関する通知書
・特定口座年間取引報告書
・未成年者口座年間取引報告書
・特定割引債の償還金の支払通知書
悪用例たち
たとえば、次の文章は、悪用例が色々書かれています。
勝手にクレジットカードが作られて引き落としされる。引き落としを止めようにも止まらない。大切な財産を失った上、借金まで。
警察や金融機関に訴えたものの、調査はするが、とりあえずはお金は返ってこない。あるいは、よくあるケースと泣き寝入り。
知らぬ間に、会ったこともないし名前すら知らない外国人と結婚していることに。離婚しようにも相手がどこにいるのか分からないし、とにかく不気味。
挙げ句の果てには、その相手が不法滞在者ということで配偶者の自分にも飛び火。事情聴取を受けるなど面倒に巻き込まれる。
勝手に自分名義の車が契約されていて、その車を使った犯罪が発生。勤務中に警察から呼び出しがかかり、会社を早退。弁明や後処理にも多大な時間がかかった上に、会社からの信用も失う。
知らぬ間に住民票が移転されていて、気付いた時には、自分名義でアパートが契約されていて見知らぬ外国人が多数、そのアパートに住んでいる。家賃の未納が溜まっていて、支払う羽目に。外国人を追い出すのにも、弁護士等に依頼し、多大な金額や労力を使う。
などの犯罪被害に遭う可能性もあります。 (引用元)
ただまぁ、これらも、結局身分証明書が盗まれたり、それこそ偽造された、という前提が必要になっていて、マイナンバーをどうこうというより、身分証明書の取り扱いとかそういう話にしか聞こえません。
マイナンバー制度ができたから急にこういう犯罪ができるようになった、というわけではありません。
たぶん悪用されるけど
きっと、マイナンバーを他人に知られて悪用され、重大な問題に合う人は出てきます。しかしそれはきっとマイナンバー単体が知られたのではなく、他の不幸や不注意との組合せで起こる問題かと思われます。
そのあたりに注意して、マイナンバーの制度を見守っていきたいものです。
関連
政府の公式情報ページがいろいろ分散しているので、「マイナンバーの公式情報ページをまとめるページ」にまとめておきました。勉強の参考にしてみてください。
つづき
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2016年6月3日(金) 14:02
マイナンバー制度には対案があります。その概要は2015年12月に総務大臣、総理大臣、自民党幹事長に対して送付しましたが、完全に無視されました。おそらくはあて先本人にまで届かなかったでしょうし、届いても理解出来なかったと考えています。この対案というのは、マイナンバー制度の問題点を全てクリアした上で、多くの不正や詐欺行為を抑止、あるいは撲滅します。サイバー攻撃に対する強力な防御効果もあります。興味がおありでしたらご連絡ください。
2017年2月24日(金) 10:07
絶対に知られてはいけないという心構えは、どちらかというと本人よりそれを受け取った法人側や税務相談事務所側にあると思うのです。
確かにマイナンバーそれ自体は他人が知ったところで何も問題が発生しえないのですが
個人情報保護法からの個人情報をばらしてはいけないとう社会的雰囲気が使用者に悪印象を与えてるんだと思います。漏えいした場合の社会的信用の低下や賠償などピリピリして当然です。
個人としてはマイナンバーカードは証明書として使えるわけで
レンタル店や中古屋店員に見せるものですし免許証のコピーをとられるのとなんらリスクは変わらないくらいだと思っています。
2018年12月2日(日) 09:49
AmazonのKDP(本の出版)の登録で納税情報入力時にTIN値(納税者番号)を聞かれ、「なんだTIN値って」とwebで調べるとマイナンバーのことでした。
KDPに登録されているみなさん、無邪気に不安も感じず登録されていることに逆に疑問を感じて、別の検索キーワードで御サイトに辿り着きました。(「kdp tin マイナンバー 不安」とかで調べたのですが、不安の文字は取り消し線で結果が出てしまいました。唯一引っかかったのは売れるだろうかという不安でした)
マイナンバーカードを手続きしてくれた役所の人や配られたパンフレット、それ以前の通知に「人には絶対に教えないように!」という言葉がしつこい程記載されていたので、呪縛でもかかった様に提出元の身分が分かっている機関でも警戒心を強めながら提出していました。
ですが、こちらのサイトで「なぜ教えてはいけないのか?」ということを教えていただき、そういえば政府広報とか調査したことなかったことに気がつきました。
なるほど、「家の鍵」のお話でしっくりきました。
役所の人たちが口が酸っぱくなるほど「教えるな」という意味も、ようやく理解できました。リスクを最小限にするという点では尤もな自己防衛ですね。
外部ネットワークを通して、マイナンバーを登録することに抵抗がありましたが、納得した上で登録できます。
ありがとうございました。