情報科学屋さんを目指す人のメモ

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メガマウスと大地震の関連づけは本当なのかについて考えたときのメモ

地震 (27)

深海魚「メガマウス」が、熊本での最初の地震の翌日4/15に三重県尾鷲市の定置網に掛かったことが、今後のさらなる大地震が発生するのではないかという話が広まっています。この話の前提になっているのは、メガマウスが発見された直後に大きな地震が起こる、という話です。これについてちょっと考えてみたことをメモしておきます。

※2日3日前から書いていたのですが、途中で放置して、放置したままなのもな、と思って後半をざっと書いて公開しました。

【最新情報】メガマウスが千葉県館山市沖(2017年5月22日)・三重県熊野灘(5月26日)で発見される

この1週間、千葉県と三重県にて、立て続けに生きた状態のメガマウスが発見され、話題となっています。このような数日間隔での発見は、2004年4月以来、13年ぶりとなります。

メガマウスと地震の関連について拡散されている情報

メガマウスが目撃されたら地震が発生する、と言われるときによく引用される文章が、メガマウスの目撃後に発生した地震についてまとめられた次の文章です。

1 1989年1月23日 静岡県浜松市の海岸(4.0メートル オス)※日本で最初の発見
  1989年2月19日 茨城県南部の地震 最大震度5弱、3月6日 千葉県東方沖の地震 最大震度5弱
2 1989年6月12日 静岡県焼津の定置網(4.9メートル 性別不明)
  1989年7月9日 伊豆半島東方沖の地震 最大震度5弱、 7月13日 伊豆東部火山群の海底火山が噴火
3 1994年11月29日 福岡県福岡市の博多湾干潟に座礁(4.7メートル メス)
  1994年12月28日 三陸はるか沖地震 最大震度6
  1995年1月17日 阪神淡路大震災 最大震度7
4 1997年4月30日 三重県尾鷲市の沖合(5.4メートル メス)
  1997年5月13日 鹿児島県北西部地震 最大震度6弱
5 1998年4月23日 三重県鳥羽市(5.5メートル メス)
  1998年5月4日 石垣島南方沖地震マグニチュード7.7
6 2003年8月7日 静岡県御前崎の沖合
  2003年9月26日 十勝沖地震マグニチュード8.0 最大震度6弱
7 2004年4月19日 千葉県市原市の埠頭(5.6メートル メス)※世界最大
8 2004年4月23日 静岡県網代沖(4.9メートル)
  2004年5月30日 房総半島南東沖の地震 マグニチュード6.7
  2004年10月23日 新潟県中越地震 最大震度7
9 2005年1月23日 三重県 アジ/鯖の巻き網漁(5.28メートル メス)
  2005年3月20日 福岡県西方沖地震 最大震度6弱
10 2006年5月 神奈川県 相模湾 (5.6メートル メス)
  2006年6月12日 大分県中部地震 大分県、愛媛県、広島県で最大震度5弱
11 2007年6月7日 静岡県東伊豆町北川沖
12 2007年7月9日 茨城県東沖(4メートル メス)  
  2007年7月16日 新潟県中越沖地震  最大震度6強
13 2011年1月14日 三重県尾鷲市九鬼町の沖合約500メートルの定置網
  2011年3月11日 東日本大震災 マグニチュード9.0
14 2014年4月14日 静岡由比漁港で捕獲 ←New!
(註 1から14の数字はメガマウスが日本で発見された順番)
メガマウスは1976年11月15日にハワイのオアフ島沖で初めて捕獲された。
日本では1989年(平成元年)に浜松市の海岸で発見されたのが初めてで現在までに14個体が発見されている。

ここにさらに、2016年4月15日 三重県での発見が加わったことになります。

※ここでは日本で最初の発見は「1989年」となっているのですが、どうやら調べてみると「1984年」のようです。

平均約54日後に地震発生

また、次の情報も広まっています。

当たりすぎる! メガマウスと地震の関係!!
 地震前兆現象を研究する筆者がこのサメの出現を取り上げるのは、もちろん「地震との関係」を探るためだ。日本でメガマウスが出現した後で大きな地震が起きているか調べてみたところ、以下の通り、出現してから2カ月以内にM6.0以上の地震が起きるケースが多いことがわかった。
・1994/11/29:福岡市東区の砂浜→1995/01/17:兵庫県南部地震(阪神淡路大震災、M7.3)
・2003/08/07:静岡県沼津市御前崎沖の駿河湾→2003/09/26:十勝沖地震(M8.0)
・2005/01/23:三重県度会郡紀勢町沖→2005/03/20:福岡県西方沖地震(M7.0)
・2007/06/07:神奈川県湯河原町沖の相模湾→2007/08/01:沖縄県北西沖(M6.1)
・2011/01/14:三重県尾鷲市沖→2011/03/11:東北地方太平洋沖地震(東日本大震災、M9.0)
・2011/07/04:神奈川県小田原市→2011/07/10:三陸沖(M7.3)、2011/08/02:駿河湾(M6.2)
・2013/09/03:神奈川県真鶴町→2013/10/26:福島県沖(M7.1)
・2014/04/14:静岡市清水区・由比漁港→?
 これらの7例で、地震発生までの遅延の平均値を求めると、約54日となる。 引用元

地震前にメガマウスが見つかる理由

また、こんなことが起こる理由として、「メガマウスが深海魚だから地震に敏感」という話があげられています。

関連がありそうに見える?

このあたりを見て、とても関係があるように感じて、大地震が来るとおびえているようです。

ちょっと考えてみる

ここから、その話について、ちょっと考えてみます。

すべてのメガマウス発見と地震が関連づけられているわけではない

まず重要なのが、全てのメガマウスの発見と、地震が関連づけられているわけではない、ということです。

これは単に、「他の理由でメガマウスが発見される場合があるだけだ」と言いたくなるかもしれませんが、これは同時に「本当は全く地震とは関係ないメガマウスの目撃を、地震と関連づけるにあたって、関連づけられる地震がなくても十分人々は関連があると考えてくれる」とも解釈できます。

「平均54日」は、直後に地震があったケースの平均

さらに、「発見直後に地震がある」という「直後」の部分も、あくまで、結びつける地震があった場合の中での話で、平均値も、その直後に地震があった場合のみを合計した平均値です。

本当は、「地震が無かった」というのも、「すごく時期的に遠い地震を予言していた」と解釈すれば、平均値はもっと大きな値になる、ということです。

地震が多ければ作れる記録

また、約60日=2ヶ月と見ると、この平均値をたたき出すには、(地震とメガマウスの出没について不利な依存関係が無ければ、)地震がその倍の4ヶ月に1度のペースで来れば十分のはずです。

したがって、つまり、4ヶ月以上間隔が開かずに地震が繰り返された年であれば(最低平均3回)、平均的にメガマウスの発見から2ヶ月後に発生、という話を作ることができ、あまり地震が発生しなかった年には、その関連づけを諦める、ということをして作り出せる噂、というような解釈もできます。

日本のM6以上の地震は多い

ここで、逆に地震側の頻度について、地震の年表を参考に調べてみると、話題に上がっているM6.0以上の地震、というのは、少なくとも、これだけの日数起こっています。

  • 1980: 2
  • 1981: 1
  • 1982: 2
  • 1983: 3
  • 1984: 4
  • 1987: 3
  • 1988: 0
  • 1989: 1
  • 1990: 0
  • 1991: 0
  • 1992: 0
  • 1993: 3
  • 1994: 4 o
  • 1995: 3
  • 1996: 0
  • 1997: 1
  • 1998: 3
  • 1999: 0
  • 2000: 9
  • 2001: 2
  • 2002: 1
  • 2003: 5 o
  • 2004: 5
  • 2005: 4 o
  • 2006: 1
  • 2007: 2 o
  • 2008: 4
  • 2009: 2
  • 2010: 3
  • 2011: 9 o
  • 2012: 3
  • 2013: 3
  • 2014: 2
  • 2015: 2
  • 2016: 3

平均を取るのに使われたメガマウスの出現年に「o」印をつけてみました。

なんだか、ランダムなタイミングでメガマウスを発見したとしても、ある程度うまく関連づけられるのではないかと思ってしまいます。

実際にランダムにメガマウス発見日を生成して当てはめてみた

そこで、Excelを使って1984/1/1-2015/12/31でランダムに14日を選択して、地震を当てはめてみたのですが、今ひとつうまく行きませんでした

特にうまく行かなかったのが、大きな地震が起こっていない時期がそれなりにあり、そこでメガマウスが発見されてしまうケースが多すぎるのです。もちろん、地震と関連づけられないメガマウスの発見が多少あっても良い、と思ったのですが、それにしても多すぎました。思っていたより、地震が起こっていない期間がありました。

最近発見されはじめたのはどういう背景なのか

そもそももう一つ気になるのは、メガマウスどうしてそもそも近年発見されるようになったのか、です。

単純に、昔は見つけてもそれが特別視されずに公式な記録に残されなかったり、そもそも報告などせずに放してしまったり、なのか、もっと特別な原因なのか、よくわかりません。気になります。

まとめ

地震の回数が多いので、そもそもあまり関係ない、ということが簡単に言えるのかな、と思ったのですが、思いの外簡単ではありませんでした。

特に、1988-1992の期間は大きな地震がとても少なく(気象庁のデータベースを見ても)、唯一大きな地震のあった1989年にだけ、ちょうど1例のみメガマウスが発見されています。

噂の文章などでは触れられていませんが、メガマウスが発見されていない期間に、地震が少ないという、逆の見方がとても印象に残りました。

うむむ。まぁもちろん、メガマウスの発見は地震予兆ですか?という質問にYesと答える裏付けになるわけではありません。強力に否定するためのひとつの方法が失敗しただけです。

偶然そういうことが起こった、という解釈はまだまだ全然成立する回数だと思います。他にも、たまたまこのような関連づけが成立するものがメガマウスで、それが地震と関連づけるものとして選ばれただけ、ということも考えられますし。その他、いろいろなことがまだまだ考えられます。

メガマウスの発見日時一覧がどこまで正しいのか、他にメガマウスが見つかっているのにもかかわらずそれが掲載されていないのではないか、なども気になります。

とりあえず、ちゃんとした科学的裏付けがされていない以上、積極的に地震との関連や地震の前兆であることを肯定することはない、というのは変わりません。

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