情報科学屋さんを目指す人のメモ

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「Lアラート(エルアラート)って何?」「Jアラートとの違いは?」について

本日2018年5月23日、「Lアラート(エルアラート)の訓練が全国で行われる予定」というニュースが報道された影響で、「Lアラートとは何か」「Jアラートに名前が似ているけれど、どういう関係何か、違いは何なのか」「LアラートのLとは何の略なのか」などが気になる人が増えているようです。

しかし実際に「Lアラートとは」について調べてみても、なかなか理解が難しいものでした。

以前Jアラートについて詳しく調べた関係で、多少前提知識は多めなのですが、それでも難しかったので、Lアラートについて理解したことを共有しておこうと思います。

Lアラート公式サイトの説明

Lアラート公式サイトの「Lアラートとは」では、Lアラートは次のように紹介されています:

利用イメージ
情報発信者が連携システムやコモンズツール(エディタ)などでLアラートに災害情報などを送信すると、TVCMLやメール、SOAPなどの配信形式で情報伝達者に一斉に配信されます。また、近隣の市町村などで発信された情報をコモンズツール(ビューワ)により確認することができます。
情報伝達者は連携システムやコモンズツールによって、Lアラートに参加する全ての情報発信者からの情報を一定のフォーマットで効率的かつ迅速に受信することができます。 引用元

「コモンズツール」や「TVCML」などの用語が目立ち、なかなかハードルが高く見える文章に感じます。

Lアラートとは

いろいろ読んだうえで「Lアラートとは」を簡単にまとめてみると、次のようになりました(細かい内容をそぎ落としています):

「都道府県や市区町村、ライフラインを管理している会社など」が住民に伝えたい情報を、「TV局や新聞社など」に「一斉配信できる」システム

これだけだとまだ「システムって何?」という感じかもしれませんが、具体的な利用イメージは、次のようなものです:

市の職員がパソコンに災害情報を入力して送信すると、TV局や新聞社など、受信登録している団体に一斉に情報が届く

どの都道府県・市区町村・ライフライン事業者が入力した情報も、コンピュータと接続しやすいいくつかの共通の形式に揃えられて(変換されて)届くため、受け取る側もシステム化(自動化)しやすく、どこから届いた情報も1つの画面で確認できるので、実際に最新情報を受け取った組織が「住民に向けて情報を伝える」という次のアクションがスムーズになります。

このあたりは比較的詳細ですが、やはりポイントは、「情報を出す側」と「情報を受け取る側」をつなぐための「情報配信システム」であることです。

そしてこの共通性の高いシステムを構築することで、緊急性の高い情報が発信されてから住民に届くまでの時間が短縮され、自動化が促進されるので間違いも減る、といったメリットがあります。また、災害発生時、システムが部分的に故障しても大丈夫なような工夫(分散・冗長構成・復旧時の再送信)が組み込まれています。

また、「TV局や新聞社、携帯電話会社、ポータルサイト運営者など」だけでなく、「近隣の自治体」にも合わせて自動送信してくれるなど、情報伝達の漏れを減らす(情報発信の手順を簡略化できる)効果はかなり大きそうです。

Jアラートと比較して説明すると

実はLアラートは「Jアラート」と比較すると分かりやすいのですが、そもそも「Jアラートとは何か」が誤解されがちのため、簡単にJアラートとは何かを説明します(※エリアメールのことでも、ミサイル情報のことでも、サイレンのことでもありません)。

Jアラートとは、これもざっくりと言うと「『国』が発信したい情報(災害情報やミサイル発射の情報など)を、『地方自治体など』に一斉に配信するシステム」のことです(※Jアラートはさらに「地方自治体の管理する『防災行政無線』などを自動起動させるシステム」がポイントだったりします。これにより、市の職員の手作業というタイムロスなしに、国が日本中の防災無線・地域のスピーカーから情報発信できるわけです。また地方自治体だけでなく、「携帯電話各社(docomo、au、SoftBank等)」も受信するようになった関係で、エリアメール/緊急速報メールも自動配信されるようになっています)

この構造は、とてもLアラートに似ていると思います。

JアラートもLアラートも、「国民(住民)に知って欲しい重要な情報を持っている組織」が、「国民(住民)に情報を効率よく伝える手段」を利用できる「組織」に対して、情報を一斉配信するシステムとまとめることができます。

Jアラートの場合は「情報を持っている組織」が「国(内閣官房・気象庁)」、「情報を効率よく伝える手段」が「(主に)防災無線」、その伝達手段を利用できる「組織」が「地方自治体」です。

一方で、Lアラートは、「情報を持っている組織」が「地方(地方自治体。都道府県や市区町村。電気やガスなどのライフライン事業者)」、「情報を効率よく伝える手段」が「(主に)TVやポータルサイトなど様々」、それを利用できる「組織」が「TV局や新聞社、ポータル事業者、新聞社など様々」といった具合です。

※JアラートもLアラートに似て、受信する側はTV局などの報道機関を含めて様々であるなど、重なる部分も大きいため、より正確に強調しておくと、一番の特徴は「『主な』発信者」および「『主な』(メインで想定している)伝達手段」かと思います。

LアラートのLって何の略?

実はJアラートのJも明確な略は定義されていない、というのが正解で、公式に「Japanの略です」などとなっている訳ではありません。

それと同様、Lアラートも公式ページの説明上に、「L」についての説明は出てこないのですが、この「Lアラート」という名称が決定(もとの呼び名からの変更)が行われた際の資料(PDF)に「新名称のコンセプト」として、次の記載がありました:

災害時の地域のお知らせを地域の住民に迅速かつ確実に届けていくローカ ル(Local)な緊急警報(アラート)というメッセージ。

とのことなので、「L」は「Local(ローカル)」の頭文字を意識して付けられたもののようです。

参考

※実は、消防庁が出しているJアラートのシステム構成解説図に「LGWANやインターネット経由の地上回線」の図があるのですが、おそらくここにLアラートが組み込まれているものと思われます。

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