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【地震】「地鳴りの音」と「地鳴りと地震との関係」についてと資料まとめ

地震 (74) 地鳴り (1)

北海道地震から2日が経過した昨日、「地鳴りが聞こえた」「地鳴りがしていて、数時間後に本震が来るらしい」「地響きが鳴っていて5、6時間後に地震が来る」などの噂が広まりました。

そんな中、「地鳴りってこんな音だよね?」「地鳴りの音ってこんなでしょ?」という「地鳴りの音とはこんな音」の共通認識が怪しいことが気になりました。例えばいろいろな人が「地鳴りが聞こえた」「地鳴りは聞こえていない」と言っていたとしても、それらの発言の中に登場する「地鳴り」という言葉が同じものを指しているのか、よく分からないのです。というのも、「ずっと地鳴りの音とはこういう音だと思っていた」というだけで、「地鳴りの音ってこういう音だよ」という正式な見本を聞かせてもらったことがある人は多くないのでは?と思えたからです。

そこで今回は、研究機関や公的機関が発表している「地震に伴う地鳴り」の音源を探してみることにしました。YouTubeなどにも「地鳴りの音」が多数投稿されていますが、それは録音した人が「地鳴りだと思う音」であったりして、何か別の音の聞き間違いなのかどうか判別できないため、今回は除外しています。

またその過程で「地鳴り」と「地震」との関連・関係についての資料を読むことにもなったので、それらについても紹介します。

※「地震に伴う地鳴り」と一言で言っても、いろいろな種類の音があると考えられます。そのため、今回紹介する音がすべてではないことに留意しつつ、少なくともこの音は、地鳴りの音である、という点に注意してください。また、今回紹介する音源は非常に雷に似ており、こういう音がしたら絶対地鳴りだ、と判断するのはなかなか難しそうな音でした。

地鳴りの音

地鳴りの音について探してみた結果、松代地震観測所が「地震時の地鳴りの音」という15秒の音源をウェブサイトで公開しているのを見つけることができました(録音日は1965年とかなり古いものです)。

地表現象・被害写真 | 松代群発地震50年特設サイト」のページを開き、一番下にある「再生ボタン」をクリックすると、聞くことができます(Chromeにて確認)。

松代群発地震は顕著な地鳴りを伴う特徴がありました。地震動を感じていなくても地鳴りだけを観測することもありました。

引用元

12秒を過ぎたあたりで突然大きな、「近くに落ちた雷」のような激しい音が聞こえます。

地鳴りと地震との関係

地鳴りについて調べていると、「日本火山学会 1967 年度春季大会講演要旨」というかなり古い資料ではあるのですが、気象庁の方が発表した「7. 地震と地鳴りの解析」の公演要旨内に、「地震に伴う地鳴り」について、次の記述を見つけることができました:

その結果,地鳴りは,地震波の P 波と S_v 波で発生していること,付近に構造物のないところでは地震波と周波数が全く同じであること,40 c/s 以上の地震波は人間の耳で地鳴りを感ずること,地震動の震幅と地鳴りの大きさは比例すること,地鳴りは地質や地形的な影響で周波数や強さが変わることなどがわかつた.

ここから、「地震に伴う地鳴り」というものが、地震波(のP波S_v波)で発生しており、実質的に「地鳴りが聞こえた」というのは「地震波が聞こえた」に相当することが分かります(※S_v波は、良く言うS波の水平方向以外の成分)。

昨日Twitterなどで地鳴りと地震予知との関係について言われている中に「地鳴りでP波が聞こえて、その後到着するS波のことを数秒前の予知ならできる」というものが多くなりましたが、それもこの発表内容と関連していそうです。聞こえた音が本当に「地震に伴う地鳴り」であれば、単純にそのとき(有感かどうか問わず)「地震(余震)が発生した」と考えて良さそうです。

「大きな地震の前に地鳴りが聞こえていた」について

次のように、「大きな地震の前に地鳴りが聞こえていた」との報告は複数見つけることができます。

明治以降では、1949年の今市地震がよく知られています。この地震では、ほぼ同程度の規模の地震(M6.2とM6.4)が8分の間隔をおいて続けて発生しました。この地震によって、今市市付近では震度6相当の揺れが生じ、県内で死者10名などの被害が生じました。また、この地震の数日あるいは数ヶ月前から地鳴りがあったことが報告されています引用元

ただしここで言う「地鳴り」についてはそれ単独で「地鳴りは前兆現象だ」と考えるのではなく、先ほどの「地鳴りと地震との関係」の通り、「前震(かもしれない地震)の音が聞こえた」と考えるほうが適切そうです。

地鳴りと地震予知

そして、これはあくまで「地震が起こった後振り返ってみれば」であって、地鳴りが聞こえたことで、今後発生する地震について「数時間後に発生しそう」というような明確な予知ができるわけではないということもポイントです。

この点については、「地鳴りを参考にして地震を予知する」という方法に限らず、以下の通り気象庁が「確度の高い地震の予測は難しい」と案内しています:

「(時)一週間以内に、(場所)東京直下で、(大きさ)マグニチュード6~7の地震が発生する」というように限定されている必要がありますが、現在の科学的知見からは、そのような確度の高い地震の予測は難しいと考えられています。 引用元

このあたりの「ずばりいつ頃発生する」という予測が難しいことから、現在防災科学研究所などが発表する地震予知の研究結果も「今後○○年以内に○○で震度○○以上の地震が発生する発生する確率が○○%」という形式をとるのでしょう(※この形式の地震の予測はニュースでもたまに見かけるかと思います)。

「確率論的地震動予測地図」には、いろいろな種類のものがありますが、代表的なものとしては、今後30年以内に各地点が震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を地図として示したものがあります。 引用元

群発地震

冒頭2つ資料はどちらも1960年代とかなり古いものでした。しかしそれらはただ単に古いのではなく、実はどちらも「松代群発地震」の録音・分析となっています。

松代群発地震は、1965年以降数年にわたって繰り返し発生したの総称で、数年間にわたって、何度も繰り返し地震が発生していました。その頻度は1日に数百回や数千回発生という規模です。

気象庁の「地震を知る 地震・津波と大規模地震の予知」という冊子の「3-3 群発地震」では群発地震の特徴に「地鳴り」が上げられており、松代群発地震は特に地鳴りの分析・研究に適した状態で、地鳴りの分析が見つけやすかったのかも知れません。

内陸で起こる群発地震は、浅い(深さ数km)場合が多く、震央付近では地鳴りが聞かれる場合がある。

震央(震源)に近いところで聞こえる

この群発地震の説明の中にも「震央付近では」とされており、「震源地の遠くでは地鳴りは聞こえない」という特徴が読み取れるのですが、この点については次の文献「南九州の地鳴りと震央距離との関係について(験震時報第26巻pp.115-117、1962年、気象庁 出版)」にも記載がありました(※特定地域の地震と地鳴りについて述べている点には注意が必要)

一般的に地震に地鳴りを伴う率は震度とか振動の周期にはあまり関係はなく,だいたい P-Sの長短,つまり震央源からの距離の大小に大きく関係するらしい. P-Sが 5秒をこえるもの,つまり震央距離が 40kmをこえる地震では,まず地鳴りは伴わないようである.

地鳴のほとんど全部は体感地震と同時またはその直前に生じていることは,地鳴り音自身が震源から波及してくるのでなく,観測所の近くーに生じてそれから波及してきているものであることを示している.おそらく P波が地面に衝撃をあたえて地鳴り音を生ずるのであろう.

「地鳴り」を前兆として扱うもう一つの自然災害

地鳴りと地震の関係について調べていると、地鳴りを「前兆現象」として扱っている国土交通省に掲載された資料がありました(土砂災害警戒避難に関わる前兆現象情報の活用のあり方について(前兆現象資料-2))。しかしこちらは「地震」ではなく、「がけ崩れ」や「土石流」の前兆現象でした。

こちらの資料では、「がけ崩れ」や「土石流」が発生するメカニズムを時間経過にそって説明しています。その中の段階ごとに発生する現象があり、それらを「前兆現象」として扱っています。その中でも災害直前や災害発生時の現象として「地鳴り」が紹介されている形です。

「地鳴りが聞こえた」と思った際は「地滑り・崖崩れ」への警戒を忘れないようにしてください(今回地滑りや崖崩れ発生時の地鳴りサンプルについては調べていません)。

参考資料

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